ハーベイ・カイテル Keitel, HarveyFilmography

A.e.Suckは語る

 えぇ、よく覚えていますよ。最初にハーベイを知ったのは、そう、1979年に八重洲スター座で観た「タクシードライバー」でした。アイリス(J.フォスター)のポン引きのスポーツって役で、トラヴィス(デ・ニーロ)にあっけなく殺されてしまうんですが、淒くインパクトありまして。
 その翌年日本公開された「地獄の黙示録」のウィラード役は、コッポラは最初S.マックィーンにオファーしたんですが、法外なギャラを要求されたのでハーベイを抜擢してフィリピンでクランクインしたんです。でも突然イメージが違うといって撮影半ばで彼を降ろしてしまい、変わりにマーティン・シーンを呼びました(*1)。肥ったM.ブランドもコンテのイメージからかけ離れてましたが、さすがに追い返せなかったようです(笑)。
 フィリピンから帰国した彼にオファーしたのは、劇場デビュー作を準備中のR.スコットでした。日本公開はずっと遅れましたが「デュエリスト」です。その後ピアニスト役の「マッド・フィンガーズ」や、悪の博士を演じたSF「スペースサタン」と彼の出演作を追っかけましたが、J.ニコルソンと共演した「ボーダー」を最後に、しばらく日本では彼とお目にかかれなくなったんです。ハリウッドを離れ、活動の場をヨーロッパに移したからです。役者としての不遇時代ですね。親友のマーティー
(*2)やボビー(*3)は超売れっ子として地位を確かなものにしたのに。
 やがてマーティーは問題作となった「最後の誘惑」のユダ役で彼をハリウッドに呼び戻したんです。再びハーベイが注目され始めました。日本でも「ピアノ・レッスン」や「レザボア・ドッグス」あたりからやっと認知されたようですので、後はご存じかと。キューブリックの遺作「アイズ・ワイド・シャット」での出演シーンがカットされたのは残念でしたね。

(*1)コッポラのカミさんが撮ったMaking「Heart of the Darkness」にもこのエピソードはある。
(*2)マーティン・スコセッシの愛称。
(*3)ロバート・デ・ニーロの愛称。


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