December 02, 2009

『Waltz With Bashir』

戦場でワルツを戦場でワルツを
イスラエルの劇場用アニメーション「戦場でワルツを」が公開中だ。監督自らが友人らへの取材によって、イスラエルのレバノン侵攻の記憶を辿るドキュメンタリー。全編をFlashアニメで描いた小規模な作品。今年のアカデミー外国語映画賞にノミネートされたが、「おくりびと」に負けた。それでもFlashアニメとしては快挙だし、Flashやアニメの枠を越えて高い評価を得た功績は大きい。オレの好みではないけどね。アニメーションとしては決して技術的に高いわけではなく、オレでも1人で作れそう。まあ、オレならもっと動かすけどね。ただあんまりやりすぎると劇映画になっちゃうんだけど。
本編の動きのほとんどはトゥイーンばっかしで味気ない。アニメというよりモーションイラスト。イキイキと動くキャラクターアニメではなく、淡々としたアートアニメ。ベタとBLカゲのクッキリした絵柄によって、監督の主観が明確に伝わるからか、海外ではやたら評価が高い。バジェット200万ドル、実写でやったら莫大な金がかかっちゃうね。予めビデオ撮影はしてるけど、R.リンクレイター作品みたいにトレスはしてないとのこと。背景に加工した写真を使ってたりはした。絵にしたぶん、リアリズムや情報量が減ってかったるいので何度も観たい映画ではない。ラストシーンは実写なんだが、やっぱ、生の映像の持つパワーはスゴイ。USはR指定。日本はPG-12。

アワード

アカデミー賞:外国語映画賞ノミネート、カンヌ国際映画祭:パルム・ドールノミネート、全米批評家協会賞:作品賞受賞、LA批評家協会賞:アニメーション賞受賞、ゴールデングローブ: 外国語映画賞受賞、英国アカデミー賞:外国語映画賞&アニメーション賞Wノミネート、放送映画批評家協会賞:外国語映画賞受賞、セザール賞::外国語映画賞受賞、第9回東京フィルメックス:最優秀作品賞受賞、ザグレブ国際アニメーション映画祭:グランプリ

メイキング

監督のアリ・フォルマンがFlashで映画を作るきっかけになったのが、2004年に彼が手がけたTV番組。これがFlashで作られてた。

「戦場でワルツを」も、このTV番組のスタッフを起用。まず、6週間かけて3分のパイロットを制作して資金を調達。シナリオに基づいた取材をビデオ撮影し、8ヶ月かけて編集して96分のドキュメンタリービデオを制作。

そのビデオを元に、4ヶ月かけて絵コンテ作業。この絵コンテに従って、6人のアニメーターで6ヶ月かけて線画によるアニマティック(Vコン)を制作。それを元に美術監督と3人のアシスタントが2300枚のイラストを起こし、10人のアニメーターがそれらのイラストにFLASHで動きをつけた。1日あたり24カットのペースが、慣れた頃には36カット。

日本のアニメの影響が垣間見られる。オープニングの野犬の暴走シーンは「ホルス」、路地を進む戦車が次々に車を潰していくのは「空飛ぶゆうれい船」か「さらば愛しきルパンよ」へのオマージュ?

FLASHのバージョンはMX2004か8。いずれにしてもマクロメディアのアプリ。時期的に8だろうな。たぶん、イラストをパーツにしてモーショントゥイーンやシェイプトゥイーンで動きをつけてる。もちろんフレームアニメもやってます。冒頭の犬とか、タイトルになっているワルツのシーンとか。

市街地の背景は写真を加工したのも使ってるっぽい。撮影はAfter Effectsでコンポジット。監督はロトスコープ作画は一切してないと強調してる。よく言われるんだろうなあ。90分の尺で総制作費は170万ドル。

FLAも紹介されてる。
製作・監督・脚本:アリ・フォルマン(1962-)
美術監督:デイヴィッド・ポロンスキー(1973-)
アニメーション監督:ヨニ・グッドマン(1976-)
戦場でワルツをWaltz with Bashir: A Lebanon War Story
デイヴィッド・ポロンスキーの原画で構成したグラフィックノベル
戦場でワルツを戦場でワルツを 完全版[DVD]
メイキングと監督インタビューを収録した2枚組DVD
戦場でワルツを戦場でワルツを 完全版[Blu-ray]
メイキングと監督インタビューを収録したBlu-ray
作品解説
Posted by A.e.Suck at December 2, 2009 09:01 AM