インテリジェンスなアニメ本

山村浩二(著)
六耀社(ISBN: 978-4-897-37985-2)
トゥイーンはアニメーションとは認めていない山村浩二さん。Flashアニメはカットアウトの紙芝居ってイメージなんだろうね。初のTVアニメ『鉄腕アトム』を見た大塚康生さんも同じようなことを言ってたっけ。FLASHでフレーム・バイ・フレームでアニメ作れるんだけど、トゥイーンはアニメーションでないってところは同感。

そんな山村さんがアニメーションのしくみや歴史を解くことでアニメーションとは何かと説いているのが
この本。創作アニメーションってアートアニメ寄り。個人制作アニメーションに興味がある人向きの入門書だ。同郷でほぼ同年代なのに通って来たアニメ道がまったく違うから、この道38年のオレでも知らんことだらけだった。講義のようなインテリジェンスな内容で勉強になる。原理、歴史、手法を学習できる学術書っぽいのがアニメーション教本と違って新鮮。小難しいわけじゃなくて読みやすいよ。図版も多いし。
勘違いされてることもいくつかあるんでツッコんでおくと、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』はティム・バートンではなくヘンリー・セリック作品。トレス台は「透過光台」ではなく「透写台」が正しい。透過光は撮影用語。フィルム撮影機材の「線画台」って聞き慣れないけど「撮影台」のことです。そうそう、『
戦場でワルツを』はFLASH製カットアウトアニメです。

藤ひさし、田中聡(著) 小林忠(監修)
河出書房新社 (ISBN: 978-4-309-27819-3)
本屋で手に取ったら面白そうだったのでそのままレジへ。葛飾北斎の『北斎漫画』って、版画の
下描きの絵で版下絵というものをまとめた本。現代の漫画と違って絵を習いたい人向けの絵手本。要するに北斎のスケッチ集だと思っていい。

この『北斎漫画』を「動き」の観点から検証したのが
この本。北斎の画力はめちゃくちゃ高いんだけど、動いて見えるように描くことにも拘ってたらしい。日本最初のアニメーターって解説してる。フィルムもパラパラマンガもない時代、アニメーターのスキルを持ってたって意味。たしかにポーズとか連続性がアニメの原画っぽい。シルエットにしても動きがわかる絵って、トラディショナルなアニメの教本と同じだね。などと、この本の大半を占める図版を眺めて思ったりする。引用される絵は大きくて見やすいけど、4000点もある中のほんの一部なんだよね。
Posted by A.e.Suck at June 21, 2017 01:15 AM