May 17, 2025
アニメーター研修「虎の穴」
線の練習
いきなり仕事できるわけじゃないんですよ。まずは新人動画研修から。当時のアニメ業界は東デ、つまり東京デザイナー学院アニメーション科の卒業生が入ってくるのが普通でした。オレは高卒だったけど「余計なこと知らなくてかえっていいかも」と入れてもらえたわけ。入った翌日、5月17日から研修です。研修期間の3ヶ月は3万円の給料が保証されてました。でもMさんに「線が全然ダメ!動画以前の問題」ってことで、まずは線の訓練から。新人の動画研修どころじゃありません。「消しゴム使うな。失敗したら新しい紙に描き直せ」と言われました。鉛筆をトキントキンに尖らせて、ほっそくて綺麗な線で清書するわけです。毎日線の練習です。動画研修
やっとOKが出て、動画に進むことが許されます。教材は『グランプリの鷹』の原画コピーにタップ穴をつけたものでした。鷹也の振り向き→すず子の振り向き→鷹也の走り。これらをクリアしないと動画マンになれません。いずれも師匠のMさんからOKもらえるまで繰り返し、なかなかOKもらえず辛かったー。OK出たら次に進むシステムです。
鷹也の振り向き

まず2枚の原画を清書してチェックしてもらいます。OKがもらえたら中割りを描きます。中3枚でこちらに振り向きます。キャラのサイズも変わってます。真ん中の中割りは横顔です。これは今なら原画にするか、原画マンによるアタリが入ります。当時はキャラ表を見ながら横顔を描くのは動画マンでした。真ん中と原画の間を2枚中割りします。横顔の直前、頬が見えてくるのが難しいです。中割りを清書したら師匠のチェックを受けます。こんなにも中割りが難しいもんだとは。OKがもらえるまで何度も描き直しが続きます。
すず子の振り向き

5月23日に鷹也の振り向きがOKしてもらえましたのですず子の振り向きに進みます。動きとしては振り向きというより回り込み。中3枚の真ん中は正面顔です。正面顔さえ描ければあとの2枚はなんとかなりますが、正面顔には難儀しました。キャラ表にも正面顔はなく、左右のバランスが難しく、裏から見ても崩れないように描かないといけません。しかも髪型が反転してます!隣の席の先輩にアドバイスしてもらいながら完成。しかし一発OKとはならず、描き直しを繰り返します。
鷹也の走り

5月25日の午後にすず子を清書して師匠に見せてOKもらいました。次はいよいよ鷹也の走りなんだけど、奥に走ってターンして手前に走る。これが相当の難関、重心の移動は難しいです。会社の前の路地で走って研究です。走り、実験の末、苦心の完成。汗の成果。Mさんの言うことにゃ養成の時はみんなこれやるんだけど、実際に走って研究したのは俺が初めてだそうです。Mさんに修正してもらってどんなポーズを描くべきかわかってきました。
初仕事
5月29日、走りでOKもらいました。それからやっと動画マンとして仕事がもらえます。3ヶ月やってみて、アニメーターに向いてないと判断されたらクビなんです。
これがアニメーターのデビュー作に続きます。
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